2010年 06月 29日
金曜日のフェズ
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以前は自称ガイドはしつこいし、道が複雑すぎて一人じゃ歩きにくいし、崩れそうな建物ばかりで正直この街の何が面白いんだ?くらいにしか思っていなかった。
けれども昨年の夏、日本から帰国してすぐに仕事でフェズに1週間滞在し、毎日毎日メディナに歩いて出かけて、ようやくその面白さと奥深さが見えてきた。
先日再び取材で訪ねたフェズ。
最終日の金曜日、午前中はかろうじて開いていた店がちらほらあったものの、午後には「あれま〜、まさかここまでとは!」というくらい、どこも閉店、閉店。
まったくもってフェズ、ライフスタイルさえもが、今もって昔のままである。
仕事上は、ある程度にぎわいのある写真が撮影したかったのだけれども、このとき私は、この静かな茶色い行き止まりに出会えた事に、とても感動してしまった。
メディナは昔、日の入りとともに城門や、それぞれの区域の扉を閉じて安全を守っていたと言われるけれど、マラケシュではもはやそんな時代遅れの古都の知恵になど、昔話や歴史の話以外で出会う事はできない。
ところがフェズでは、まだ騎馬に乗った兵隊が、人力で戦争をしていたような時代から続いているのであろう習慣が、今でも生活の片隅に生きている。
変わらないライフスタイルが古い町並みをそのまま守り、古い町並みが、ライフスタイルをいにしえのまま守っているのだろうと思うと、現代生活からしてみれば多少“不便・残念”な「閉まっている」という状況も、1000年前から続いてきた知恵が生きて踊っている、輝かしい現場のように見えてしまうのだ。
カメラマンさんにも編集者さんにもちょっと残念だったかもしれないし、「ほぼ全てが閉まっている」というその状況は、普通にやってくる旅人にも、やはり残念なのかもしれない。
けれども、もはやそんな隠れた「生きた歴史」に出会える場所がモロッコ国内にも少なくなっているという事を知っている私には、こんな瞬間こそが面白い。
フェズの街のアンティーク店巡りも、1週間くらい平気につぶせそうな面白さながら、「これはまた気がつかなかったな!」という、本で習った歴史が今も街に生きる姿を探す“生きたアンティーク”探しができるのが、実はモロッコ旅行の隠れたハイライトであり、最大の贅沢かもしれない。
次はどんな発見が待っているかな!
何年住んでも、きっとずっと、その瞬間を楽しみにしてしまうに違いない。
by mayoikata
| 2010-06-29 15:46
| モロッコ国内の旅